サピエンス全史 (上) 要約

10万年前の地球には、少なくとも6つの異なるヒトの種が暮らしていた。

(ホモ・ルドルフェンシス、ホモ・エレクトス、ホモ・ネアンデルターレンシスなど)

しかし、私たちは自分たちが唯一の人類だとばかり思っている。

ホモ=ヒト

サピエンス=賢い

の意味。

 

 

認知革命

7万年前から3万年前にかけて、新しい思考と意思疎通の方法が登場した。

→虚構、すなわち架空の事物について語る能力

(例:部族の精霊や国民、有限責任会社、人権といった現実には存在しないもの)

また、虚構のお陰で単に物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。

狩猟採集

原子共同体

・古代の狩猟採集民の集団は、原子共同体で暮らしていた。

原子共同体とは・・・私有財産も、一夫一婦制の関係も持たず、各男性には父権さえない。集団の成人全員が協力して子育てにあたっていた。

※現代の不倫や高い離婚率は、私たちの生物学的心理とはかけ離れた生活(核家族と一夫一婦制)を強いられているからではないか?という学者がいる。

 生活スタイル

・サピエンス集団のほとんどは、食べ物を探してあちらこちらを歩き回りながら暮らしていた。

・生き延びるために、縄張りの詳しい地図を頭に入れ、個々の植物の生長パターン、動物の習性についての情報が欠かせなかった。

・自分自身の身体や感覚という内的世界にも精通するようになった。

・農耕民よりも、飢えや栄養不足は少ない。背が高くて健康だった。

→食物の多様性。必要な栄養素を全て確実に摂取することができた。

平均寿命は30~40歳。(子供の死亡率が高かったのが原因で、最初の数年を生き延びた子供は、60歳や80歳まで生きる可能性がたっぷりあった)

・多くの専門家は、「原初の豊かな社会」と定義している

他者との良好な交流と、質の高い交友関係を人生において最も大切にしていた

アニミズム

・一般にアニミズムが信じられていた

アニミズムとは・・・ほぼあらゆる場所や動植物、自然現象には意識と感情があり、人間と直接思いを通わせられるという信念。

 

農業革命

・一万年前、いくつかの動植物種の生命を操作することにサピエンスがほぼすべての時間と労力を傾け始めた

・様々な場所で、それぞれ完全に独立した形で発生していった

・農業革命は、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。

・平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。

農業革命は、史上最大の詐欺

・小麦、稲、ジャガイモなどの一握りの植物種にサピエンスが家畜化された。

・農業革命の神髄は、以前より劣悪な状況下であってもより多くの人を活かしておく能力である

 

歴史の数少ない鉄則の一つに、贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる、というものがある。

人々は、ある贅沢品に一旦慣れてしまうと、それを当たり前と思うようになる。そのうちそれに頼り始める。そしてついには、それなしでは生きられなくなる。

 

サピエンスの集合的な力の劇的な増加と、表向きの成功が、個体の多大な苦しみと密接につながっている

・未来に対する懸念が生まれ、その根本は農耕につきまとう不確実性

想像上の秩序

・人類は、数十人から成る小さな生活集団で何百万年も進化してきた。

しかし、数千年で都市や王国や帝国が登場し、争いが勃発した。

→大規模な協力のための本能が進化するには短過ぎた。

 本能が欠けていたが、狩猟採集時代に何百もの見知らぬ人同士が協力できたのは、共有された神話を信じる気持ち=想像上の秩序のお陰。

・私たちが特定の秩序を信じるのは、それが客観的に正しいからではなく、それを信じれば効果的に協力してより良い社会を作り出せるから。

・想像上の秩序は、人口の相当部分(とくにエリート層や治安部隊の相当部分)が心からそれを信じている時にだけしか維持できない。

 

自分の人生をまとめ上げている秩序が、自分の想像の中にしか存在しないことに人々が気づくのを妨げている3つの要因

1、想像上の秩序は物質的世界に埋め込まれている

2、想像上の秩序は私たちの欲望を形作る

ロマン主義国民主義、資本主義、人間至上主義など

・ごく個人的な欲望と思っているものさえ、大抵は想像上の秩序によってプログラムされている

3、想像上の秩序は共同主観的である

・客観的・・・人間の意識や新年とは別個に存在する

・主観的・・・単一の個人の意識や新年に依存して存在する

・共同主観的・・・多くの個人の主観的意識を結ぶコミュニケーション・ネットワークの中に存在する。たとえ一個人が信念を変えても、あるいは死にさえしてもほとんど影響はない。

 

・既存の想像上の秩序を変える為には、まず、それに代わる想像上の秩序を信じなくてはならない。逃れる方法はない。

 

書記体系

 帝国は、法律以外にも、業務や税金の記録など膨大な量の情報を生み出した。

しかし、人間の脳は帝国サイズのデータベースの保存装置としてはふさわしくなかった。

 

脳が保存装置としてふさわしくない理由

1.脳は容量が限られている

2.人間はしに、脳もそれとともに死ぬ

3.人間の脳は特定の種類の情報だけを保存し、処理するように適応してきた

(狩猟採集の時代は、動植物や知性にまつわる情報や社会的な情報を大量に保存するように適応していたが、農業革命の後、大量の数理的データを扱う必要に迫られるようになった。)

 書記の発明

そこで、シュメール人が大量の数値的データを扱うようにできているシステム、「書記」を発明した。

・初期段階では、書記は事実と数に限られていた。

書記の最も重要な任務は大量の数理的データを保存すること

・2種類の記号が使われ、一方の記号は数、もう一方は人や動物、品物、領土、日付を表していた。

・古代の筆写者は、情報の目録作りや検索、処理の技術を勉強し、身につけた。

このシステムを運営する人は、正常に機能するためには、普通の人間として考えるのをやめて、整理係や会計士として考えるように頭をプログラムし直さなければならない。

 

・書記体系が人類の歴史に与えた最も重要な影響は、人類が世の中について考えたり、世の中を眺めたりする方法を徐々に変えたこと。

自由連想と網羅的思考は、分類と官僚制に道を譲った。

 

想像上のヒエラルキーと差別

大抵の社会政治的ヒエラルキーは、論理的基盤や生物学的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたものに他ならない。

 

人類の統一

現代の世界は、自由と平等との折り合いをつけられずにいる。だが、これは欠陥ではない。このような矛盾はあらゆる人間文化につきものの、不可分の要素なのだ。

それどころか、それは文化の原動力であり、私たちの種の創造性と活力の根源でもある。

ホモ・サピエンスは、人々は「私たち」と「彼ら」の二つに分けられると考えるように進化した。

・紀元前1000年紀に普遍的な秩序となる可能性をもったものが3つ登場し、その信奉者たちは初めて、一組の法則に支配された単一の集団として全世界と全人類を想像することができた。それは、貨幣・帝国・普遍的宗教 

貨幣

狩猟採集時代、農業革命後も、大半の人は、小さく親密なコミュニティで暮らし続け、自給自足の経済単位で、相互の恩恵と義務に加えて、外部の人との若干の物々交換で維持されていた。

しかし、都市や王国が台頭し、輸送インフラが充実した。

→物々交換の限界が訪れる

(限られた製品を交換する時にだけ効果的で、複雑な経済の基盤を成しえない為)

 

登場

貨幣の発達には技術の飛躍的発展は必要ない。それは純粋に、精神的な革命だった。人々が共有する想像の中にだけ存在する新しい共同主観的現実があればよかった。

貨幣は相互信頼の制度であり、しかも、これまで考案されたもののうちで、最も普遍的で最も効率的な相互信頼の制度。

※貨幣は硬貨や紙幣とは限らない。品物やサービスを交換する目的で、他のものの価値を体系的に表すために人々が進んで使うものであればそれは何であれ貨幣だ。

 

紀元前3000年 シュメールにて「大麦貨幣」が出現

大麦は、本質的な生物学的価値があるため、信頼を築くことは容易だった。

しかし、保存も運搬も難しかった。

紀元前3000年半ば 古代メソポタミアにて「銀のシェケル」が出現

やがて硬貨の誕生に繋がる。

 

普遍的原理

1.普遍的転換性 貨幣は錬金術師のように、土地を忠誠にに、正義を健康に、暴力を知識に転換できる

2.普遍的信頼性 貨幣は仲介者として、どんな事業においてもどんな人同士でも協力できるようにする。

邪悪な面

・信頼が個性のない硬貨やタカラガイの貝殻に依存している時には、各地の伝統や親密な関係、人間の価値が損なわれ、需要と供給の冷酷な法則がそれに取って代わる。

・見ず知らずの人同士の間に普遍的な信頼を築くが、その信頼は、人間やコミュニティや神聖な価値ではなく、貨幣自体や貨幣を支える非人間的な制度に注ぎ込まれている。(私たちが信頼するのは、人ではなく、その人が持っている貨幣であり、彼らが貨幣を使い果たしたら、私たちの信頼もそれまで。)

 

人々は貨幣に頼って、見知らぬ人との協力を促進するが、同時に、貨幣が人間の価値や親密な関係を損なうことを恐れている。

 

帝国

帝国とは

・それぞれが異なる文化的アイデンティティと独自の領土をもった、いくつもの個別の民族を支配していること

・変更可能な境界と潜在的に無尽の欲を特徴とする。自らの基本的な構造もアイデンティティも変えることなく、次から次へと異国民や異国領を飲み込んで消化できる。

 

※帝国は、その由来や統治形態、領土の広さ、人口によってではなく、文化的多様性と変更可能な国境によって定義される

 

人類の文化は全て、少なくとも部分的には帝国と帝国主義文明の遺産であり、どんな学術的手術あるいは政治的手術をもってしても、患者の命を奪うことなく帝国の遺産を切除することはできない。

 グローバル帝国へ

21世紀が進むにつれ、国民主義は急速に衰えている。次第に多くの人が、特定の民族や国籍の人ではなく、全人類が政治低権力の正当な源泉であると信じ、人権を擁護して全人類の利益を守ることが政治の指針であるべきだと考えるようになってきている。